薬剤師の積極的な関わりが治療効果につながる可能性を提示
株式会社カケハシ(本社:東京都中央区、代表取締役社長:中尾 豊、代表取締役CEO: 中川 貴 史、以下「カケハシ」)は、薬局体験アシスタントMusubi(以下「Musubi」)でサポートされた薬剤師の服薬指導によって、緑内障治療薬の一種であるプロスタグランジン製剤(以下「PG製剤」) の点眼アドヒアランスが8.7ポイント向上したことをお知らせします。
この結果は、薬剤師による患者さんへの積極的な関わりが治療効果につながる可能性を、提示したものだと考えています。今後も、薬剤師を通じて患者さんに最適な薬物治療が届くよう支援してまいります。
緑内障は日本に465万人の患者がいると推定されており、¹40歳以上の日本人の20人に1人が罹患²する代表的な代表的な眼疾患です。眼圧の高まりによって視神経が圧迫・損傷を受け、病状の進行によって視野欠損や失明に至るリスクのある不可逆的な病で、日本人の視覚障害要因では第一位³となっています。
治療は点眼による薬物治療が主であり、眼圧を低下することのできる点眼剤は多数上市されています。しかし、緑内障はその自覚症状の少なさから、患者のアドヒアランス(患者が治療の意義や方針 を理解・納得し、積極的に治療に参加すること)が悪いことで知られており、新規患者の4分の1以上が治療開始3ヵ月で治療から離脱⁴していると先行研究で示されています。
また、アドヒアランス不良と失明との関連性も先行研究で示されており、高い治療効果⁵を得るためには、疾患理解を深めて点眼を継続する大切さを啓発し、個別に点眼の仕方やタイミングの最適化をはかることによるアドヒアランスの向上が重要とされています。
今回の取り組みは、「Musubiを利用した薬剤師の服薬指導により、患者のアドヒアランスを高めることができるのではないか」という仮説をもとに開始しました。
¹ 日本緑内障学会「緑内障診療ガイドライン(第4版)」, https://www.ryokunaisho.jp/guidelines/guidelines_all.pdf , P.7
² Tetsuya Yamamoto, Aiko Iwase, Makoto Araie,et al.”The Tajimi Study report 2: prevalence of primary angle closure and secondary glaucoma in a Japanese population.” Ophthalmology. 2005 Oct;112(10):1661-9 (通称 多治見スタディ)
³H17 厚生労働科学補助金 九州大学「網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究」,
https://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=200500858A#selectHokoku
⁴Kashiwagi K, Furuya T ”Persistence with topical glaucoma therapy among newly diagnosed Japanese patients”.Jpn J Ophthalmol. 2014 Jan;58(1):68-74.
⁵ Philip P Chen “Blindness in patients with treated open-antle glaucoma” Ophthalmology. 2003 Apr;110(4):726-33.
Musubiを導入している薬局にてPG製剤が処方された場合に、Musubiに搭載された健康機能によって、疾患や薬剤の理解を深める数種類のコンテンツ(以下「当該コンテンツ」)を提示しました。薬剤師によって当該コンテンツが使用されたことをMusubi上のデータとして蓄積し、一定期間において当該コンテンツを使用された患者(以下「使用群」)と使用されなかった患者(以下「不使用群」)について、その後の治療継続率に影響しているかどうかをMusubi上のデータを解析することにより調査しました。
その結果、使用群(3,410人)の治療継続率は87.0%、不使用群(13,275人)の治療継続率は78.3 %で、8.7ポイントの差が見られました(P<0.05)。
年齢・併用状況・医療機関種別(病院/診療所) の要素を調整しても、5.8ポイント(88.9% vs 83.1%)の差が確認されました(P<0.05)。
再来率およびギャップ率の分析も行い、いずれも使用群のアドヒアランスが有意に高いことが示される結果となりました。
●全体スキーム
株式会社カケハシ代表取締役社長 中尾 豊
今回の取り組みは、Musubiによる視覚情報を付加した服薬指導が、患者さんのアドヒアランス向上と来局の継続に寄与する可能性を示すものとなりました。
この結果は、薬剤師による適切な服薬指導が、大きな医療的価値を有していることの証でもあると考えています。
薬剤師に求められる価値が対物業務から対人業務へと変化しつつあるなかで、薬剤師による対人業務の有意性を提示できたことに喜ばしさを感じるとともに、この結果が薬局のさらなる変化のきっかけになることを願っています。今後も、多くの医療関係者と共に、社会的に意義のある情報の発信に貢献してまいります。
【使用データ取得期間:2019年8月27日~2019年12月31日】
【データ蓄積期間:2020年1月1日~2020年6月30日】
【検定方法:母比率の差の検定】
【各用語の定義】
・当該コンテンツの使用:Musubiのデータ上で当該コンテンツを使用した履歴がある ・対象患者:(数を示すときは“総患者数”と表記)
治療継続率:使用データ取得期間にPG製剤の調剤があり、データ蓄積期間に当該コンテンツを使用されていない
ギャップ率:使用データ取得期間とデータ蓄積期間にPG製剤の調剤があり、データ蓄積期間に 当該コンテンツを使用されていない
再来率:使用データ取得期間とデータ蓄積期間にPG製剤の調剤があり、データ蓄積期間に当該 コンテンツを使用されていない
・使用群:対象患者のうち、使用データ取得期間に当該コンテンツを使用された患者
・不使用群:対象患者のうち、使用データ取得期間に当該コンテンツを使用されていない患者 ・離脱:使用データ取得期間内の最終調剤日と次の調剤日の間が6カ月(180日)以上 (データ蓄積期間に調剤がなかったケースを含む)
・継続:使用データ取得期間内の最終調剤日と次の調剤日の間が6カ月(180日)未満 ・治療継続率:継続者数 / 総患者数
・ギャップあり:データ蓄積期間中にギャップ(60日以上の調剤間隔)がある ・ギャップなし:データ蓄積期間中にギャップ(60日以上の調剤間隔)がない
・ギャップ率:ギャップあり患者数 / 総患者数
・再来率:データ蓄積期間における調剤回数別にその回数調剤した患者数 / 総患者数
(図表)各分析結果 治療継続率(数値が大きいほうがアドヒアランスが高いことを示す)
ギャップ率(数値が小さいほうがアドヒアランスが高いことを示す)
再来率(数値が大きいほうがアドヒアランスが高いことを示す)
これからの薬局に求められる「患者満足」。それは患者さん一人ひとりに向き合う薬局スタッフの 「働き方改革」なくして実現するものではありません。そして働き方改革は、適切な「店舗の状況把握」があってこそ。Musubiはその全てをサポートし、薬局・薬剤師と患者さん“双方”の薬局体験を向上させる、従来の電子薬歴とは明確に異なる新時代のサービスです。
薬剤師は、患者さんと一緒にMusubiのタッチ機能付き端末画面を見ながら服薬指導を行い、その内容が自動で薬歴のドラフトとして残ります。Musubiを利用することで、患者さんとのコミュニ ケーションと薬歴記入を同時に行うことができます。
それにより、今まで服薬指導とは別に毎日数時間かかっていた薬歴記入に関わる薬剤師の業務負担を、大幅に削減することが可能となります。さらに、Musubiが患者さんの健康状態や生活習慣にあわせた服薬指導や健康アドバイスを提示することで、 新しい薬局体験を患者さんに提供することができます。2017年8月にリリースして以来、順次導入店舗を拡大しています。
サービス紹介 https://musubi.kakehashi.life/
メルマガ登録 https://musubi.kakehashi.life/musubinews
「日本の医療体験を、しなやかに」をミッションに、医療現場の課題を深く理解し、最新の技術をもって今までにない医療システムを提供することで、社内外の医療従事者と一緒により良い日本の医療の未来を形作っていくことを目指します。
会社名 株式会社カケハシ
設 立 2016年3月30日
所在地 東京都中央区築地4丁目1-17 銀座大野ビル9F
U R L https://www.kakehashi.life/
株式会社カケハシ 広報
メール pr@kakehashi.life
電 話: 03-5357-7853